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《映画感想》人怖と心霊ホラーの混在する悪夢『ラストナイト・イン・ソーホー』

f:id:shikamarusan:20211216072258j:imageやっと観てきました、エドガー・ライト監督最新作『ラストナイト・イン・ソーホー』

今回はネタバレありで感想書きますーー!!

Twitterとかは直で他の人に見られてしまう故、ネタバレ感想がぶちまけられないため、ブログは書きやすい!(Filmarksもやってますが、あちらは感想発信したいので笑)

filmarks.com

 

これは、現代版の『赤ずきんちゃん』である。

f:id:shikamarusan:20211219193700j:image60年代のノスタルジックで輝かしい世界観は現代を生きる主人公エロイーズの視点で見ていくと、序盤は非常に魅力的で吸い込まれるような感覚を覚える。しかし、ショービズ界を夢見るサンディが夢を砕かれていく姿を見るようになり、それが恐怖へと変化していく。

サンディは美しく自信に溢れている女性であるが、それを逆手に取られ、ポン引きの罠に引き込まれて身体を金持ちに売られて、歌もろくに歌わせてもらえないような生活をさせられていってしまう-。

 

今作を観ている際に、大学の文学の教授が話していた赤ずきんの話を思い出した。

有名な童話『赤ずきん』は、シャルル・ペローという人物の手で今の言い伝えに一番近い形に整形された。理由としては宮廷のサロンに通う若い女性たちに向けてこれを教訓として聞かせるためであったと言われている。

どういった教訓かと言うと。

純真無垢な少女を、オオカミつまり野蛮な男たちは彼女らの大事なもので罠にかけていつでも食いにかかってくるぞ。というもの。

森は都会でも宮殿でもどこにでも変わる。どこへ行ってもオオカミの危険があるということ。ペローはこれらを若い女性たちに伝えようとしていた。

今作『ラストナイト・イン・ソーホー』にはそれに通ずるテーマがある。

サンディは実際、そのオオカミの手中に収められ、群れによって食い尽くされてしまった。彼女は完全に壊されてしまい、最後にはオオカミたちを殺さざるを得ない状況となり、自分がオオカミのようになることでそれを気づいたエロイーズまで手にかけようとしてしまったのだ。

このテーマは序盤でエロイーズにも降りかかっており、ロンドンに来てすぐの彼女を乗せたタクシーの運ちゃんがスケベエな発言でセクハラまがいなことをしてくるシーンがある。これ、日常生活していると近しいことをしているオジサンなどを見かけることもあるので、ヤバいシーンかと言われるとそうでもないが、言われた方は気持ち悪いに決まっている。

エドガー・ライトは、現在のペローのような考え方で、教訓を含ませているんだと思われる。

 

これは、一種のアイドル映画である。

f:id:shikamarusan:20211219193644j:image今作を観た人には言わずもがな、ヒロイン二人の可愛さは天下一品であった。エロイーズを演じるトーマシン・マッケンジーの素朴で内気ながらも元気な等身大の女の子感と、サンディ演じるアニャ・テイラー=ジョイの毅然としていて、通り過ぎる人が二度見してしまう優美さ。これを映画のキャラクターによって最大限に観ることができた。それはただそのイメージ通りの役というだけに終わらせず、そのイメージだからこその逆な要素としても機能していた。

例えば、サンディは序盤、自分のビジュアルにも歌にも自信に溢れていて、それに値するポテンシャルを持つ女性であった。しかし、あの地獄に飲み込まれてからのシーンでは、楽屋で悲しみと怒りで弱い姿を見せるようになり、スターを夢見ていた頃に撮ったであろう自身の写真を鏡に貼り付けているのだ。彼女に感じた毅然とした姿は、実は強がりであり、彼女も当然普通の女の子であるということがわかるシーンだ。演じるアニャの一度見たら忘れないようなカリスマ性のあるビジュアルに観客は騙されてしまうのだ。

そう言った意味でも、この2人の若手の脂の乗ってきている女優のアイドル映画としても見れると考えている。

 

これは、パブ映画である。

f:id:shikamarusan:20211219193835j:image今作のエドガー・ライトの作品群で有名なのが、俳優のサイモン・ペグとニック・フロストが出演している3作品、ショーン・オブ・ザ・デッド『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』がある。この3作品ではパブが非常に大事な役割を担っていた。

ショーン・オブ・ザ・デッドでは、街の人々がゾンビ化していく中で、生き残りの主人公ショーンたちが目指す目標地がパブ。

『ホットファズ 俺たちスーパーポリスメン!』では、田舎町に左遷された主人公の凄腕警官エンジェルが街に着いて初めていく場所がパブであり、ラストバトルでもパブが登場する。

『ワールズ・エンド 酔っ払いが世界を救う!』では、20年ぶりに再開した5人の幼馴染が、学生時代に達成出来なかったパブ12軒の梯子酒に挑戦するという話。もちろん出てくるシーンの多くはパブだ。

そして、今作もパブが大きな役割を果たしている。エロイーズが女子寮の同級生たちに連れて来られ、彼女らの本性を知る場所、サンディのようになるため、引越し先の家賃を払うためにバイトを始めるバイト先、自分を付け狙っている怪しい老人に出会う場所。

パブは日本では多くはないが、イギリスでは一般的な飲み屋さんなので、まぁ大衆酒場のような感じなのかな。

老若男女が和気藹々と飲みを交わす活気のある面と、少し影のある異様な感じもある不思議な空間なのかもしれません。

今回は、今までの作品とは違って、そのちょっとした異様感を上手くヒロインの心情とマッチさせる作りになっていたように感じる。

 

物語のラストは、妄想である。

f:id:shikamarusan:20211219194110j:image最後は我ながら、非常に暴論だと思う。

終盤、エロイーズは老婆の大家サンディによって殺されかけるが、自身の過去を思い出し、これ以上牢獄のような気持ちでいたくないとサンディが命を絶ったことで、生き残ることができた。

そして数ヶ月後、学校内で開催されたファッションショーで成功を収めたエロイーズは、祖母とボーイフレンド、先生やイジメていた同級生にまで拍手を送られる。(イジメの主犯ジョカスタは冷め気味だったが笑)

そして、鏡を見るとそこには若く活気の溢れていた頃のサンディの霊も笑顔で迎えてくれる。

なんで良いハッピーエンドなんだ。

だけど、このシーンに私はすごく違和感を感じた。

 

なんかハッピー過ぎないか?

だって、エロイーズは、幽霊のせいだったとは言え、ジョカスタをハサミで刺し殺しかけたし、バイトのバーでオジさんが轢き殺された際にも走って逃げてるし、よくみんな受け入れたよなぁ…。

しかもサンディは殺そうとまでしてたわけで、最後自ら命を絶って、若者の成功を鏡の中から笑顔で見守っていられるほど器は広かったのか…。

 

まぁ他にも音楽が最高だったとか、60年代映画や音楽の小ネタが多くあったらしいとか、色々感想はつきないけど、流石に長くなったので、今日はこれくらい!

 

以上

 

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