《アメコミを読む#4》ミニョーラ度全開の不可思議短編集『驚異の螺子頭と興味深き物事の数々』
著名なアメコミライターって言われて、出てくるうちの10本指に入る、超有名なライター マイク・ミニョーラ。ミニョーラと言えば、世界各地の奇々怪々を解決する『ヘルボーイ』のシリーズが有名ですが、そんな彼の短編集が邦訳されています。
それが『驚異の螺子頭と興味深き物事の数々』です。今日はコチラを完読したので、お話ししてきます。今作は6作の短編に分かれています。
- 驚異の螺子頭
- アブー・グングと豆の木
- 魔術師と蛇
- 魔女とその魂
- 火星の虜囚
- 興味深き物事の礼拝堂にて
『驚異の螺子頭』
19世紀を舞台に、螺子(ネジ)の形の頭だけのサイボーグが、米国のリンカーン大統領の命を受けて、盗まれた大帝グングという架空の人物の功績と秘宝の在処を示した断章の奪還に向かうお話。
登場するキャラクターや要素には、スチームパンクとオカルトが混在しています。主人公の螺子頭は、名前の通りネジ型の頭だけの存在なので、お呼びのかかる任務に合わせて、それに適した体を装着します。彼が移動に使うロケットは、「月世界旅行」の大砲の弾のよう。ここら辺は非常にスチームパンク。そして、断章を盗んだのは、ゾンビ皇帝という、腐敗した髑髏頭のいかにもな悪役。終盤には異界の魔物まで現れます。ここらへんはミニョーラの大好きなオカルトチックさが目立ちます。
要素などに捻りはありますが、ストーリーは単純明快なヒーロー譚なので、そこは割とヘルボーイに通じています。
『アブー・グングと豆の木』
1話目の『驚異の螺子頭』にも名前の出てきた大帝グングの幼少期のことが語られます。有名な『ジャックと豆の木』をオマージュしたようなストーリーで、悪魔との取引で豆を貰った少女が空腹から豆を食べてしまい、体から大木が生えてしまうというお話。グング少年が起点を聞かせて、悪魔を退治する様が滑稽で面白いです。
また、出てくる悪魔のビジュアルが、赤い肌に険しい顔つき、頭部に火の王冠と、ヘルボーイに似ている。お遊び的にこういう要素を入れてくれるのは嬉しい。
そのほかの話は、ミニョーラが7歳の娘ケイティと書いた、動物と人間の友情のお話『魔術師と蛇』、動く木の人形の兄弟が登場する『魔女とその魂』、幽霊が語る火星に幽閉された奇妙な体験譚『火星の捕虜』、そして『魔術師と蛇』に繋がりを感じる、思いつきで書いたらしい、僅か3ページのイラスト『興味深き物事の礼拝堂にて』が収録されている。後半のお話は全部数ページのみなので、あらすじを書いちゃうとそれでおしまいになってしまうので、ご紹介のみにしておきます。
◆感想◆
全編に渡って、マイク・ミニョーラ純度100%の世界観が展開され、スチームパンクと怪物、悪魔、宇宙人、魔法、などなどが混在する短編集でした。アートも全てミニョーラが書いているので、ミニョーラのアート好きは絶対に買うべき作品だと思います。
個人的には、ストーリーに物足りなさを感じました。
ヘルボーイ以上に内容がペラペラ…。
ヘルボーイの短編シリーズが好きということもあり、もう少し捻りの効いた作品を期待していたので、少し不完全燃焼。
邦訳ミニョーラ作品のコレクションとして、ミニョーラのアートを楽しめる一作として買って良かったとは思います。
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